ホリエモンのマネー論 by 加藤2009/09/30 15:00

ホリエモンのマネー論

加藤和明

2009年09月28日@福来亭
2009年09月30日 加筆修正

1.まえがき
昨日、燦々会(大学の同級会)の真瀬さん宛に、web-site保守・管理へのお礼状をさしあげた際、
・・・
小生は、先週の今頃は裏磐梯に遊び、五色沼で“初期の紅葉”を愛でておりました。只今は、筑波山中腹の寓居で、クラシック聴きながら、ホリエモンこと堀江貴文氏の新著「新・資本論:僕はお金の正体がわかった」(宝島新書:2009年7月24日刊)を読んでおります。「なるほど、彼はこんな風に考えていたのか!」とあちこちで感心(?)したり、吃驚したりして読み進めています。
・・・
と書き添えたところ、早速「燦々会のweb-site」に、“読後感”を書くように要請されてしまいました。
以下は、そのご要望に対するお応えとして書いたものです。印象に残った『ホリエモン語録』とそれについての感想を、思いつくままに記します。

2.ホリエモン語録
 A.“今回のクラッシュの本質は何かっていうと、レバレッジかけてた部分が、結局、正常範囲にもどったっていうだけ”
(page.16,line.1:16頁右から1行目、以下同様)
 B.“「お金とは、信用を数値化したもの」これが、僕なりの定義です” (page.20,line.7-8)
 C.“お金は最初から「しるし」である以上でも以下でもない・・・経済活動の信用を媒介する道具であって、そもそもがバーチャルなものなのです” (page.21,line.1-2)
 D.“信用っていうのはコミュニケーションによって成り立つ”
(page.40,line.9)
 E.“生きていくうえでは、お金の多寡が問題なのではなく、信用の有無が問われるのです”
(page.21,line.12-page.22,line.1)
 F.“信用とは、簡単にいえば、「自分自身を生かしていく自分の力」のことであり、信用は成功体験によってつくられます”
(page.58,line.10-11)
 G.“成功体験があって自信を持っていれば、信用はいくらでも創造できる”
(page.25,line.10-11)
 H.“日本は幸福ではないかもしれないが、悲観するほど悲惨な状況にあるわけではない”
(page.29,line.9-10)
 I.“マンションなんか買う必要ない”
(page.44,line.7)
 J.“銀行が価値を保証する「銀行券」はユダヤ人が発明したと言われていますが、金と交換できる兌換紙幣が最初に発明されたのは、十世紀の中国においてだとされています”
(page.49,line.7-9)
 K.“(紙幣イコールお金という)このイメージにこそ、思い込みと誤解があるのです”
(page.49,line.12)
 L.“バブルとその崩壊との間隔は次第に短期化していく(とは思います)”
(page.54,line.1)
 M.“実は資本主義システムっていうのはものすごくコンパクトになる(んじゃないかと、僕は思ったりもします)”
(page.55,line.11-12)
 N.“信用をつくる一番の方法は、投資をすること”
(page.59,line.3)
O.“(投資は)お金のことだけを指すのではありません。時間であることもあるでしょうし、自分ができることをやってあげる=能力を投資するというケースもあり得るでしょう。重要なのは、リスクを取って自ら動く、ということです”
(page.60,line.1-4)
 P.“信用ってのは無形固定資産みたいなもの。いざという時に換金できる” (page.67,line.9-10)
 Q.“信用は流動性がない”
(page.68,line.1)
 R.“お金と情報って似てますね”
(page.69,line.2)
 S.“生命保険とは、その本質においてリスクの高い商品”
(page.79,line.5)
 T.“広い意味での投資においては、リスクとはリターンの不確実性の高さをも含みます”
(page.79,line.8-9)
 U.“07年のデータで約15万人の多重債務による自己破産者がいる”
(page.85,line.8)
 V.“現実と誰かに刷り込まれた理想とのダブルスタンダードを自分のなかに共存させておいておかしいと思わない。これが思い込みの始まり、短絡的な理解というものの正体なのではないか”
(page.90,li ne.7-9)
 W.“(世の中で現状、当たり前だと思われているルールや習慣といったものは、実は恣意的意図的に運用されたり、改変されたりすることが非常によくある・・・)ルールや習慣を運用したり、改変するのは、常に普通の人たちにはないパワーやポジションを持った人たちです”
 X.“僕はね、銀行は要らないと思うんですよ”
(page.97,line.3)
Y.“銀行にだって実質的には審査能力なんかない”
(page.98,line.6)
 Z.“それがもし実体経済だっていうんであればね、日本のGDPが500兆円なんてありえない”
(page.101,line.9-10)
 a.“ルールを恣意的に運用するなんて簡単ですよ。情報格差を利用してるんです”
(page.104,line.12 - page.105,line.1)
 b.“ネット上にあるウソはもちろん、現実世界に何食わぬ顔で存在するウソにしても、ウソを見抜くためには「ウソであると論理的に導き出せる力」が必要です”
(page.114,line.7-10)
 c.“リテラシーは、自分が獲得してきた知識や体験、それにコミュニケーション力の総体だ”
(page.114,line.12 - page.115,line.1)
 d.アメリカの国益を守るという競技のなかでのルールにおいて、アメリカが優先順位を日本から中国へと改変されたことを紹介した後で、“日本がもし、十全な外交力、つまり「ウソ(ハッタリ)をウソ(ハッタリ)であると論理的に見抜く力」をもち、見過ごすことのできない「内なる信用創造」ができていれば、このようなルールの改変はおいそれとはできなかったでしょう”
(page.116,line.10-12)
e.“エリーティシズム批判が結果的にお金の本質を学ぶ機会を奪い、・・・、逆説的に格差を助長しているということにそろそろ気づくべきです”
(page.125,line.11 - page.126,line.1)
 f.“日本に社長は100万人以上いる”
(page.154,line.8-10)
 g.“特に若いうちは、思い切ってレバレッジをかけて、大きく勝負すればいいと思います”
(page.159,line.3-4)
 h.“いま、すごいレバレッジをかけて国がお金を借りているんですよ、要は。それは、いずれ適正規模に縮小されて行くわけですよ”
(page.169,line.7-8)
 i.“(国は)結局、お金を返せなくなって、その負担は国民に強いるみたいな話になる。ハイパーインフレーションになっちゃうとかね。通貨価値が下がって、実質的に金融資産が半分になっちゃうとかね”
(page.170,line.3-5)

3.ホリエモン語録への感想
 A.はぁ、そういうことですか。
 B.初めてお目にかかりました。
 C.はぁ、そういうものですか?
 D.50% 同意。
 E.考えたことのない視点です。心に留めておきます。  
 F.同上
 G.同上
 H.そうだと嬉しい。そうあって欲しい。
 I.一理あり。しかし、“記述命題の真偽”はすべからく“前提”に依存するので、要は、不確実性を含め、未来をどう予測するかでしょう!
 J.私にとっては新しい知見でした。
 K.このことは、私もとっくに気づいていました。
 L.ホリエモンさんの予言として承っておきます。
 M.同上
 N.一つの見識と認めるけれど、必要十分とは思えない。
 O.このことはよく分かります。
 P.大変ユニークな見解であり、私にとっては新知見です。
 Q.同上
 R.この視点も面白い。言われてみれば確かにそうだ。
 S.このことは、うすうす感じてはいたが、個の力は小さいものなので“仕方のないこと”と割り切って(あきらめて)いた。きちんと定量的に評価すればそうなるだろうとは考えていたが、自分でそれを確かめることは“対投資効果比”を考えると試みる気にはならなかった。“誰かが儲かる話”である以上、誰かが旨い汁を吸っているのは自明であった。
 T.放射線のリスク管理を専門としているので、当然のことながらよく分かっておりました。
 U.調べたことなかったので有用な新知識です。
 V.その通りだと思います。
 W.私もそう思っていました。
 X.初めて耳にする“ご意見”です。ペンプラにおられる“銀行屋”さんたちにご意見伺ってみたいです。
 Y.同上
 Z.確かにね!一人平均500M¥を“稼ぎ出す”ということになるんだものね。
 a.ホリエモン氏がそれで儲けたことは知っています。
 b.まったく同感です!
 c.これも同感です!
 d.同上
 e.同上
 f.調べたことなかったので有用な知見です。多いだろうとは見当ついていました。
 g.ホリエモンさんのいう前提に立てば同意できますが、個人個人の好み・選択の問題でしょう。
 h.20年前に気づきました。
 i.20年前からそう思っていました。

4.しまいに
 貨幣の“価値”が“財的価値の測度”であるとするならば、それを右から左に流通させるだけで“新たな価値”を生む、というのは、まったく合点が行かないことです。物事(モノゴト)の理(コトワリ)を考えられる人なら、誰にでも分かることです。
 28日の25時頃上の原稿を書きあげたのですが、29日の昼過ぎになって、早稲田大学「投資研究サークル」のOB達が、internetによる株取引で“株価”を操作し巨額の利益を得た、という報道が飛び交い、偶然とはいえ余りのタイミング良さ(?)に驚かされました。
彼らのしたことは、ホリエモン氏がライブドアでやったことと、本質的は変わりがないのです。つまり、貨幣価値が財的価値の測度であり、財的価値の測度=“財的価値そのもの”という思い込みをさせ、財的価値の測度である貨幣価値が時間(正確には時刻)と空間(場所)の関数であることを世間が明確に認識していないことを利用して儲けていたのです。
しかし、人々の“無知”と“錯覚”を利用し、測度の値の変化の“時間差”と“地域差”を利用して儲けている人たちは、ホリエモン氏が語っているように、有名企業や公的機関を含め、世の中にワンサと存在するわけでするから、彼らの行為だけを責めるのは如何なものかという気持ちになります。
私は、数年前「財的価値の基準を定めないのは経済学者の怠慢である」と、ペンプラザ(エッセイの同人誌)に書きましたが、ホリエモン氏は「教育の怠慢である」と上の書物で主張しています(敢えて上の語録には取り込みませんでしたが、ホリエモン氏は教育についても感心する主張を幾つかされています)。
ともあれ、この点での根治療法を施さない限り、リーマン・ショックに類することは、繰り返し起きると思います。この点はホリエモン氏と同意見です。

                                 以上

コメント

_ 管理人 ― 2009/10/01 17:26

加筆変更された原稿に差し替えました.

投稿記事の書式:
表示を投稿文のスタイル合わせられと良いのですが,全てお仕着せの書式になってしまいます.ご了解下さい.

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