古希人の独り語りⅠ 桜花のこと 二題 by 相原2010/03/01 17:10

古希人の独り語りⅠ

                                  桜花のこと 二題                                                                                                                                      相原 孝志

その1  花見酒

「酒がなくてなんの桜かな、花見に酒はつきもの」と、兄貴分と舎弟分とで向島の花見に酒を売って一儲けしようと目論んだ良く知られた落語の噺だが、手持ちの五銭のやりとりで商売用の樽酒を飲み干してしまう実効実利を伴わない商売の話である。この噺に準え、著者 笠 信太郎氏は、高度成長期の日本経済を危惧した「花見酒の経済」を20年ほど前に著した。当時の土地バブルが背景にあるのだが、平成の今になって彼の言う「日本独自の経済」が確立されたといえるだろうか。かなりの犠牲と引換えに経済大国とはなったものの、自立精神を持たぬ国家となって、米国の金融バブルといずれ予感される中国バブルとに振り回されていくのではないのかと思ってしまう。そして昨今の政治は「花見酒の政治」なのかと問いたい気持ちだ。



その2  さいた さいた さくらが さいた

「さいた さいた さくらが さいた」 これは国民学校一年生の国語教科書第一頁に書かれていたものと思うのだが、どんな頁だったのか記憶は定かでない。山の神が野に降りてくる頃、厳しい冬に耐えてきた桜木は、そのご褒美に桜花爛漫を頂くのかもしれないと今では思えるのだが、ホヤホヤの一年生が「さいた さいた さくらが さいた」をどんな気持ちで読んだのか今では知る由もない。そして「さいた さいた……」を読んだ時から、志学、而立、不惑、知命、耳順、還暦、古希と幾度となく人生の節目を経て、今ここに至った長い人生を振返らざるを得ない気持ちになってしまう。しかもそれぞれの節目をどれほどまでに全うできたのかと思ってしまう。人生の最後の仕上げのため残された時間は十分ではないが、諦めず自助あるのみと思うこの頃である。



コメント

_ 管理人 ― 2010/03/03 21:10

さいた さいた さくらが さいた の一文を読んで思い出した事があります.
それは 国民学校1年に入学して最初の読み書きで習ったのが,先の「さいた さいた」か,それとも「アカイ アカイ アサヒ アサヒ」だったか,が判然としないので,だいぶ昔ある事を契機に調べた思い出です.
そのある事とは,ご存知のむきもあろうかと思いますが,「朝日ジャーナル」に掲載されていた赤瀬川 原平の「桜画報」最終回での一件です.例の「アカイ アカイ アサヒ アサヒ」のイラストのパロディーで太陽を朝日新聞のロゴに描き変えて「朝日は赤い,白い朝日はない,せめて桜色でなければ(原文のままでない)」との趣旨のコメントがつけられていました.読者の誤解を恐れた朝日新聞はかの「朝日ジャーな」を書店から即刻回収しました.当時小生は「ジャーナル」を新聞と一緒に配達しもらっていましたので,回収を免れ手元に残りましたがいつの間にか紛失してしまいました.それはどうでも良いのですが,問題は「サイタ サイタ サクラガ サイタ」の印象が強く,最初に習ったはずだという「アカイ アカイ アサヒ」が思い出せません.その代わり「コマイヌサン ア コマイヌサン ウン」は鮮明に覚えていました.そこで「コマイヌサン」をたよりに調べてみて,ヨミカキの最初に習ったのが「アカイ アサヒ」だったことが判明はました.
この記憶の混乱は次のような事ではなかったかのではないでしょうか.1年入学を前にして,前年度の教科書に目を通し,勉強し慣れ親しんでおくことは当時としても普通だったのでしょう.小学校が突然国民学校に変わり教科書も別になったのですから一年生としては戸惑ったのではないでしょうか.記憶が曖昧だったはそのような理由からだったのでしょう.
ところで一年生の12月には無謀な戦争が始まりました.当時の児童は少国民などと称されて軍国教育をされましたね.孫たちにはこの様な思いはさせたくないものです.

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